本シンポジウムは終了しました
人の活動に必要な栄養を吸収する「腸」。
最近の研究で「腸」は、栄養を吸収する機能ばかりでなく、第二の脳として、人の心や行動に大きな影響を及ぼしていることが分かってきました。
その最新の研究の一端を紹介するとともに、後半のパネルディスカッションでは、心と体の健康と幸せに導く「食と腸の関係」について考えていきます。
講師
上野川 修一
(東京大学 名誉教授)
「はじめに」―知られざる腸のはたらき―
腸は食を消化吸収していのちに変える器官である。そのため独立した神経系を有し、腸が最適状態で働くよう自らをコントロールできる「考える器官」である。このことからセカンドブレインと呼ばれることもある。
さらに、腸はからだへの病原微生物の侵入を防ぐ、からだ最大の免疫器官でもある。わたくしたちのからだを守ってくれているのである。さらに、そこには100兆個ともいわれる腸内細菌が生息し、わたくしたちのからだに重要な影響をあたえている。さらにわたくしたちが日常とっている食によっても腸の環境は左右されるため、これを健康に保つための食品の開発も積極的に行われている。しかしながら、このように高度で複雑な働きが集中している腸について知られていないことが多い。 今回はそれぞれの分野の第一人者によって、その知られざる部分を明らかにしていただけるものと大いに期待している。
福土 審
(東北大学大学院 医学系研究科 教授)
「腸と脳」
動物はたった1個の細胞である受精卵から発生する。受精卵が分割を繰り返し、器官を作れる程度に細胞が増えると、内側に細胞が管を作りながら伸びて行き、身体の腹側に1本の管状の体を作る。これが腸である。脊髄は進化とともに、口側にふくらみを作った。これが脳である。動物の進化につれて、脳は脳幹からはじまり、小脳、間脳、大脳辺縁系、大脳新皮質とその構造物を増やして行った。われわれの体では、まず腸が発生し、後に脳が発生したことをよく理解しておく必要がある。過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)においては、腸と脳のストレス応答が病態生理の中核をなす。腸と脳の関係には多くの科学的普遍性が隠れていると考えられ、それをどのように見つけ出すかが今後重要である。
八村 敏志
(東京大学大学院
農学生命科学研究科
准教授)
「腸と免疫、アレルギー」―腸は最大の免疫器官―
我々の免疫系は、病原体、異物を認識して排除することにより体を守るしくみであるが、腸は、その最前線として、最大の免疫器官となっている。また、食品や腸内共生菌も、異物であるため、腸管免疫系に認識されるが、これらに対する応答は、病原体に対する応答とは異なる特徴を有しており、過剰な免疫応答が起こらないしくみが備わっている。このような腸管免疫系の反応は、特徴的な免疫担当細胞により担われており、この興味深いはたらきについて、紹介したい。
服部 正平
(東京大学大学院
新領域創成科学研究科
教授)
「腸と腸内細菌」―日本人の腸内細菌叢の特徴―
近年その技術革新が著しい次世代シークエンサーの活用により、これまで難攻不落であったヒト常在菌叢の全貌が明らかになりつつある。たとえば、ヒト遺伝子の数十倍の遺伝子を有する腸内細菌叢、大きい個人差、日本人に特徴的な遺伝子の存在等、多くの新知見が次々と明らかにされている。とくに最近では、腸内細菌が消化器系疾患のみならず1型糖尿病、肥満、メタボリック症候群等の消化管以外の疾病の発症と関連することが明らかになり、腸内環境の異常が全身的な疾患発症の根幹に存在するという考えが浸透してきている。本講演では、細菌叢の解析技術、日本人の腸内細菌叢、欧米人との比較、疾患細菌叢、機能性腸内細菌等について解説したい。
山本 直之
(カルピス株式会社 研究戦略部長)
「腸と食事」―腸環境と食品開発―
腸内環境を適正に保つことは健康を維持する上で極めて重要と考えられているが、いったい我々の腸の中の状態はどのように健康と関係しているのだろうか?さらにその状態を正しくコントロールするには具体的にはどうすればよいのか?今回は、腸内に存在する細菌群の役割を生体との関わりという視点でわかりやすく概説する。その上で、食品を通して腸内を健康に維持するための工夫やそれに向けての食品の開発に関して、我々の取り組み内容を含めて紹介する。
パネリスト:福土 審・八村 敏志・服部 正平・山本 直之
コーディネーター:東京大学名誉教授 上野川 修一
パネリストプロフィール
日程 | 5月29日(水) |
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時間 | 講演 13:00~17:30 1.13:10~13:30 上野川 修一「はじめに」―知られざる腸のはたらき― 2.13:30~14:10 福土 審「腸と脳」 3.14:10~14:50 八村 敏志「腸と免疫、アレルギー」―腸は最大の免疫器官― 4.15:00~15:40 服部 正平「腸と腸内細菌」―日本人の腸内細菌叢の特徴― 5.15:40~16:20 山本 直之「腸と食事」―腸環境と食品開発― 【第2部】質疑応答およびパネルディスカッション 16:35~17:30 「心と体の健康と幸せに導く『食と腸の関係』」 パネリスト:講演者全員 コーディネーター:上野川 修一 |
会場 | アサヒ・アートスクエア 4F スーパードライホール (東京都墨田区吾妻橋1-23-1) |
定員 | 200名様 |
参加費 | 無料(事前のお申込が必要です) |
主催 | 公益財団法人アサヒグループ学術振興財団 |
後援 | 墨田区・公益社団法人日本医師会・公益社団法人日本農芸化学会 |
応募締め切り | 5月22日(水)10:00お申込分まで |
お申込方法 | 本シンポジウムは終了しました |
お問合せ | 公益財団法人アサヒグループ学術振興財団 TEL. 03-5608-5202 FAX. 03-5608-5201 受付時間:9:00~17:30(土・日・祝を除く) |
会場への地図 | ![]() |